Sweet break Ⅲ

『嘘でしょ…』

今日2度目の紗季の”嘘でしょ”は、驚きよりも呆れたような呟きだった。

『高1から8年って…』
『って、そこに喰いつく?…っていうか、別にこの8年何もなかった訳じゃないよ?ただなんて言うか、そういった縁がなかったっていうか…』

しどろもどろになりながら答えるが、実のところ、これといって”何かがあった”というほど浮いた話は、あまりにも少なかった。

『なるほどね…要するに、朱音はほぼ恋愛初心者ってわけね』
『そうなる…かな…』
『ま、別にそこは問題ないんじゃない?むしろ関君にしたら嬉しい誤算でしょ』
『…嬉しい?』
『そりゃ真っ新な新雪に自分だけの足跡着けられるんだから、気持ちいいはずよ』
『新雪…』

紗季は、自分で言った例えに満足したのか、『うん、間違いないはずだわ』と、強く断言する。

ちょうど新しく運ばれてきたビールに口をつけると、今度は居住まいを正し『で、相談って?』と、改めて聞いてきた。

『うん…あのさ、恋人って、友達とどう違うんだっけ?』

あえて遠回しな言い方をせずに、ストレートに聞いてみる。

『何よソレ?男友達と恋人の境界線っていう、哲学的な話?』
『ううんそうじゃなくて、もっと単純に昨日まで同期だった人が恋人になった場合、普通どう接したらいいのかなって』
『急にベタベタしたり?甘えたり?』
『茶化さないでよ』
『実際どうなのよ?この一ヶ月。デートって程じゃなくても、二人で会ってるんでしょう』

紗季に聞かれて、この1ヶ月を思い起こしてみる。
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