きみが青を手離すとき。
俺は1限目をサボって授業のチャイムとともに教室に戻った。
俺の定位置はいつも教室に設置してある暖房器具の上。日当たりがいいし、中庭も見えるし、俺が座ってるからこの場所は誰も座らない。
「サボるなら俺も誘えよ」
熊が冬眠から目覚めたみたいに、伏せていた顔を上げたのは友達の修二だった。修二の席は窓際の一番前だから、喋るのにも暖房器具の上は最適だ。
「だって、俺が学校に来た時には寝てたじゃん」
「まじで。記憶ない」
中学二年で思春期を迎えた俺は中三になった今も治ってない。そして修二の思春期は、苛立ちまくる俺とは違い、毎日毎日眠くて仕方がないらしい。
修二のあくびを見ながら、ふと中庭を見るとアイツが花壇に水をあげていた。
たしか園芸部が植えたやつだけど、ほとんど所属してるだけの幽霊部員。
勝手に土へと植えられた種があんなにもすくすくと育って花まで咲かせたのは、アイツがせっせとホースを引っ張ってくるせいだ。
ああやって誰もやらないことをすれば、内申点のひとつやふたつ上がるんだろうか。
まあ、高校なんてどこでもいい俺には関係ないことだけど。