きみが青を手離すとき。
「前田って、広瀬のこと好きだよな」
「は?」
眠い目をしていた修二が俺と同じように中庭を見ていた。
前田と言えば俺の知ってる限り、前田佳澄(かすみ)しかいない。それは俺の大嫌いな眼鏡女だ。
「なんか悪いもんでも食ったの?お前」
修二は数少ない友達のひとりだし、気も合うし、一緒にいてラクだけど、まさかこんな突拍子もないことを言うヤツだとは思わなかった。
「いや、どう見ても分かるだろ。広瀬にだけ妙に厳しいし、そういうことだろ」
どういうことだ?
厳しい=好きに結び付かないのは、俺がバカだからか?
修二はそれ以上詳しくは言わなかった。俺と違って修二はなんとなく好きな人がいそうな雰囲気は前々から感じている。
だから色恋に敏感なのかもしれないけど、友達だからと言って、詳しい恋愛事情は知らない。
べつに興味もねーし、男同士でする話でもないから。
「ちょっと、広瀬。先週配られたプリント提出してないでしょ?」
誰もいないと思って6限目をサボっていた音楽室。ついでにホームルームもやり過ごそうと思っていたところに、また前田はやってきた。
「なんなの、お前」
俺の身体にGPSでも付いてんじゃないかってぐらいコイツには居場所がバレる。