彼女が死んだ物語
「ひどいねッ あんたには人を見る目がないんじゃないの?」
「それはないもん、私の人を見る目は確実!」
「ほお、じゃあ今度見てきてやるわよ」
笑いながら、ふざけて、声あげて、毎日毎日ふざけて話していた。
そしてその時間が私にとって至福の一時だった。
ある日の事。
学校から帰ってきたら、親が珍しく二人そろっていた。
リビングでソファに腰掛、向かい合う父と母。
しかし、とても表情は硬く、けして楽しい会話をしてるようには
とうてい見えなかった。
母の左手にあるのは「離婚届」と書かれた紙があり、
私はため息をつくしかなかった。
自分の部屋へ行こうと銀色のドアノブを引こうとしたとたん
父の罵声が部屋中に響いた。
母は、わあわあとそれを聞いて泣いている。
背中で聞いて、見る事はせず、私はドアノブを引き、部屋に篭った。