彼女が死んだ物語
勉強机においてあった座布団をナミとの窓の前に置き、
そこへ、どすんと音を立てて座った。
窓にはまだナミの姿はない。
ナミが、早く来ないかと思った。
ナミが、遅いのは初めてだから、怖くなった。
ナミが、居なくなったらどうしよう。
恐怖に体を振るわせる。
何を言っているのかは分からないけれど、
親の喧嘩声が聞こえてくる。
昔からそうだ。
わざとらしく、ため息をついてみた。
「何で、いつもこんなんなの」
俯いて、一人言のつもりでつぶやいたら、何が? と言って
ナミが現れた。
一瞬ナミの姿を見て、また下をむく。
「親がまた喧嘩してるの。いつもいつも……」
指を組む指がかすかに汗でにじんでいた。
「また? 本当、よく喧嘩するねえ」