天罰
天罰
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× 俺の好きな人は10歳年の離れた弟を好きになった女性だった。大学一年目の春、俺は同じサークルメンバーを初めて実家に呼んだ。その中に密かに想いを寄せていた女性、水城 桃さんも一緒に参加していた。鈍色に輝く長いサラサラの黒髪、人を魅了してやまない切れ長の瞳にすっとした鼻筋、薔薇のように紅い唇。伏し目がちな目に企みを含んだ愛らしい唇、誰もが彼女の美しさに心を奪われ、手に入れようと試みた。しかし、彼女は誰とも情を交わすは気はないようだった。
俺の部屋にみんなが集まりトランプをしていた時だった。当時8歳の弟が「お兄ちゃん」と言って扉を開け部屋に入ってきた。彼の登場に皆が喜び歓声を上げ「可愛いね」だの「弟いたの?」だの「全然似てないね」と色んな言葉が部屋中を飛び交った。弟は一瞬にして注目を浴びたことに少し照れながら「ねぇ、僕のゲーム機知らない?」と俺に話しかけてきた。「え?知らないよ。お母さんに聞けば?」「お母さんも知らないって」他愛もない会話を続けている中、俺はふとあることに気づいた。水城さんが真剣な表情で俺達の会話を見ていたのだった。確かにみんなも笑いながら多少冷やかし、弟を応援したり、同情したりとさまざまな感情を露わにしたが彼女だけは真剣な眼差しのままじっと俺たちを見つめていた。いや、本当はあの時弟を見ていたことに俺はまだ気づかなかった。
俺の部屋にみんなが集まりトランプをしていた時だった。当時8歳の弟が「お兄ちゃん」と言って扉を開け部屋に入ってきた。彼の登場に皆が喜び歓声を上げ「可愛いね」だの「弟いたの?」だの「全然似てないね」と色んな言葉が部屋中を飛び交った。弟は一瞬にして注目を浴びたことに少し照れながら「ねぇ、僕のゲーム機知らない?」と俺に話しかけてきた。「え?知らないよ。お母さんに聞けば?」「お母さんも知らないって」他愛もない会話を続けている中、俺はふとあることに気づいた。水城さんが真剣な表情で俺達の会話を見ていたのだった。確かにみんなも笑いながら多少冷やかし、弟を応援したり、同情したりとさまざまな感情を露わにしたが彼女だけは真剣な眼差しのままじっと俺たちを見つめていた。いや、本当はあの時弟を見ていたことに俺はまだ気づかなかった。