天罰
「水城さん、久しぶり。元気?」俺はさり気なさを装って彼女の隣に腰かけた。最初、彼女は突然知らない人が声かけてきたのかと思ったのか眉間にシワを寄せ訝しがるような表情をしたが俺が「小林です」と言うと彼女はやっと合点がいったのか「あぁあ」と声を上げた。「久しぶり。ごめん、一瞬誰だか分からなかった」とあの頃とは違い愛想良く答えたので「俺もだよ。一瞬水城さんだと気づかなかった」と笑いながら答えた。他愛もない話を少し交えた後、俺はさり気なく弟のことを聞こうとしたがその前に彼女の薬指に目がいってしまった。「もしかして水城さんって既婚者?」そう聞くと「うん、そうなの。今年の夏に籍入れたの」そう言われてなぜか少しショックを受けた。「え、そうなんだ!おめでとう!」俺は自分の心を誤魔化すようにワザと大袈裟に彼女を祝った。「ありがとう」彼女がお礼を言った後、俺はすかさず「旦那さんってどんなことしてる人?」と聞くと「実は医者なんだ」と答えた。「さすが!!」美人だけあってハイステイタスな人を選ぶなぁと思いつつやっぱ手の届かない人だと今更諦めがついた。俺は色々と聞きたかったけど俺の質問を遮って突然彼女は「弟さんは元気?」と聞いてきた。
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