天罰
「もしかしてご主人ですか?」
「え?」
そう言うと彼は私の手を握り、人影のない非常口階段の方へ
私を引っ張って連れて来た。
私を扉側に立たせると彼は壁ドンをして私を見下ろしてきた。

「俺・・・ずっと水城さんのことが好きだったんすよ」
「大野くん・・・」
「あいつが出て来なければ俺が水城さんを彼女にしてた」
「大野くん・・・」
「俺たち仲良かったじゃないですか。水城さんだって本当は俺を・・・」
「待って・・・大野くん」
「待てない。あいつのことで喜ぶ水城さんをこれ以上見たくない。
奪っても良いですか?」

そう言うと彼は顔を近づけ無理やり私にキスをしてきた。
強引さとは裏腹に彼のキスは甘くとろけるように優しかった。

「や、やめ・・・」
彼はキスを止めると今度は私を強く抱きしめた。
「大野くん・・・」
彼は私の耳元で「この後二人で抜けませんか?」と聞いてきた。
私は恐ろしくなってゾクッとした。

「大野くん、離して・・・・」
彼がゆっくり抱擁を解くと私は彼に「ごめん!」と謝ってそのまま
一目散にみんなのいるところに戻った。

みんなは事情を知ってるのか私が慌てた様子でカバンを持ち「帰ります!」と言うと
「あぁあ、いいよ〜。気にしないでー」と声をかけた。

私はあの場から飛び出すように出てきた。
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