天罰
「優子ちゃん久しぶり!」

「わぁ、桃ちゃん!相変わらず綺麗だね!!」

東京駅丸の内方面の出口で落ち合うと
私達はさっそく大手町の方まで歩き
ホテルの1階にあるお洒落なレストランに向かった。

レストランは座席が赤を基調としていて可愛らしく大きな窓ガラスが壁一面を覆い
太陽の暖かな光がレストラン内全体を明るく照らしていた。

「ここのパンが絶品なんだ」と優子ちゃんに言うと
「こんなお洒落なレストラン来たことないよー」と彼女は
キラキラとした目で驚きながら店内を見回した。

「普段もこういうところでランチしてるの?」
「友達と遊ぶ時はね」
「へぇーー金持ちはやっぱ違うわね」と優子ちゃんの言葉は
少し妬みが入っているようにも感じた。

「優子ちゃんはどうなの?」
「うち?そりゃ・・ファミレスとかよ。子供とかいるし」
「そっか・・・」

料理が来て美味しく頂きながらも話題は優子ちゃんの愚痴から始まった。
子育てが大変だとか旦那が手伝ってくれないとか
優子ちゃんも働いてるから一日中家庭と仕事の両立に
心も体も限界だから息抜きがしたかったという話だった。

「大変そうだね・・・」

私はそう言って彼女を労うしか出来なかった。

「それに比べて桃ちゃんは良いよねー。旦那さん、お医者さんで金あるし、
桃ちゃんは仕事しないで優雅にこういうところで食事したりして
本当に羨ましいよ」

「はは・・・」

「悩みないでしょ?」

「いえ、そんな・・・」

「ってか、聞いてよ。私の友達の旦那がさー最近行動が怪しいって相談してきたんだけど」

「行動が怪しいって・・・?」

「不倫してるみたいよ」

「え・・・!?」

思わず飲もうとした水が気管に入り私は少しむせてしまった。

「大丈夫?桃ちゃん・・・」

「う、うん。それでなんで不倫だって思うの?」

「なんか朝帰りしたり、最近携帯をいじるのが多くなったり、出張が多くなったりしてるらしい」

「へぇー・・・」

「桃ちゃんとこも気をつけた方が良いよ。旦那さん格好良いし、お医者さんだしモテるでしょ?」

「多分ね・・・」

「桃ちゃんは最近何かあった?」

そう聞かれて私は言うつもりではなかったあのことを
急に話したくなった。
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