天罰
僕たちは会うたび必ずキスをした。最初は怖かったけど段々このスリルがたまらなくて僕は桃さんのキスに夢中になった。けれどそれ以上のことを桃さんは僕にしようとしなかった。桃さんは口癖のように「早く悟くんが大人になればいいのに」と言った。「なんで?今の僕じゃダメなの?」と聞くと「もちろん今の悟くんも好きだけど悟くんが大人になったらいっぱい色んなことが出来るから」と答えた。「色んなこと?」「ドライブしたり一緒にお酒飲んだり〜」と彼女は僕の将来を早く来ることを願いながらその時が近づくのを楽しみにしていた。だけど桃さんはため息をついて時々切なそうな顔をした。「どうしたの?」と聞くと「悟くんには早く歳をとって欲しいけど私はとりたくない」と言った。「どうして?」「だって、悟くんが格好良い男になった時は私はババアになってるから」と悲しそうに答えた。「そんなことないよ!桃さんは歳をとっても綺麗なままだよ。僕はそんなの気にしないよ」と僕はすかさず言ったけど「私が気にする」と彼女の心は沈んだままだった。すると突然桃さんは意味深なことを言ってきた。「私たち大人になったところできっと結ばれないね。私には分かるの、私たちの未来が」「え?」僕が聞き返すと彼女は「きっと不幸になる」とボソッと呟いた。「そんな・・・僕は今幸せだよ?桃さんといて」そう言うと彼女は僕を抱きしめ、「私もだよ、悟くん!ずっとこうしていられたらいいのに・・・」と言って更に強く僕を抱きしめた。「好き・・・悟くんのことが好き。どうにかなりそうなほど・・・」「桃さん・・・」彼女は抱擁を解くと「ごめんね」と言って謝ってきた。「なんで謝るの?」彼女はバツが悪そうに「罪を犯しそうだったから」と言った。「罪?なんの?」けど彼女はその問いには答えなかった。そうしてこの日を境に彼女は僕の前から姿を消した。