HATE or LOVE

もと居た教室へ戻り、ガラリと荒々しく扉を開ける。

それを合図に後ろの連中は己の持ち場に戻っていった。

いつも通り、整理の行き届いていない教室。既に教室で待機していた2年の女共は、俺達を囲むように集まってきた。

化粧、ヤニ、香水。色んな臭いが密集され、他人の臭いに敏感なアキは颯爽と自分の席へと戻っていった。ついでに、窓を開けることも忘れずに。

「千草ぁ、ねぇ帰ろうよぉ。」

「は、何言ってんのアンタ。千草は今日はアタシのモノなんだけど。」

「あ、秋人くん…今日は、その、私と一緒に…っ。」

「花房くぅーん、こんな奴よりあーしと遊ぼうよー。」

黄色い声援か、ドス黒い女の欲望か。2年のトップの彼女という肩書きがほしいコイツらは、好き勝手に俺達の周りで揉めたあと、ぞろぞろと教室から出ていったと思ったら、勝手に人数を減らして戻ってくる。

今日も例外なくいつも通り教室を去る女共をアキと見送れば、「疲れた。」とアキはケツポケからスマホを取り出した。ついでに学ランのポッケにしまわれていたイヤホンも引っ張り出し、絡まったそれをほどいていく。

多分、ほどけたらコイツは、自分の世界に籠るつもりなのだろう。

そうなったら最後、1人の世界へいざ行かん。イヤホンから漏れる音楽のお陰で、アキの耳に俺の声が届くことはなくなる。



そんなときーーー



教室の窓を横切る影。

それは入り口で止まった。

話し声が聞こえた後、ドカドカと続く鈍い音に手が止まるアキ。2人一緒に何事かと扉を見やった。

やがて打撲音は止み、少しの沈黙の後…ガラガラと音をたてて、扉は開かれた。



「……かけい、ちぐさ?」



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