HATE or LOVE

あれから2週間


狂犬と出会ってから早2週間。

あれから動きを見せない相手に、不信感を募らせたアキは、いつも以上に俺の傍を離れなくなった。

警戒心マックスのアキに、傍にいる奴等もビクビクと肩を震わせる。

それに気づかないアキは、教室の前を動く影や登校時の奇襲。バカ達の下克上作戦等に目もくれず、ただ1つの事だけに殺気だつ。

狂犬以外にも警戒すべき者は多いのに、それのみを敵視するアキも、十分人の事を言えないナルシストな気がするのは内緒な。

「アキ、ソワソワしすぎ。」

今も俺の周りをウロチョロするアキに、「周りがビビってる。」と率直な意見を伝えてヤニを1本差し出した。

ジッポライター独特のカチッと言う音を響かせながら、ひと息つくためにと煙草に火をつけるアキ。龍が描(えが)かれているそれは、俺がアキのNo.2就任を祝ってプレゼントしたものだ。

「…お前を潰されちゃ困るんだよ。」

煙が上るソレをくわえ、ゆっくりと煙を肺の中へ流していく。二酸化炭素と一緒に余った煙を吐き出したアキは、少し落ち着いた様に見えた。

「だーかーらー、それはねえって。前にも話しただろ。」

「俺が納得する理由を言わない限り、信じない。」

ハハハと大きく笑い、腕を肩に回す。
俺の腕を邪魔そうに押し退け、アキは自分の席へとようやく腰を下ろした。

「俺の勘。って言っても、安心できねえ?」

「…お前の勘がどうであれ、俺の勘がアイツはヤバイって言ってる。」

背もたれに深くもたれかかり、葉より灰の部分が増えた煙草をアキの口から外す。余った分を吸いきり、狂犬の"何か"に怯えているアキの頭を撫でた。

さらさらの髪が指に優しく絡まる。

「アキちゃんは、アイツが何なのか知ってんの。」

「何って…ナニ?」

「はは、そっかぁ、知らないで警戒できるかあ。さすが俺のアキちゃんだなぁ。」

「……。」

「コラコラ、無言で帰ろうとするな。ちーさんの話をありがたく聞いときなさい。」

「聞く気も起きない様な言い方をするバカはどこのどいつだよ、全く…。」



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