きみが白を手離すとき。
「ねえ、修二」
彼女がくるりと振り向いて俺を見る。右耳に髪の毛をかけるのが癖で、それは出逢った頃から変わらない。
そういえば、あれから何年が経ったっけ。
俺が小四で、彼女が中学一年だった八年前。
俺たちは親の再婚で家族になった。
急に俺の姉になった彼女は、三つしか歳が変わらないのにとても大人びて見えて『今日からよろしく』と笑いかけられた顔は今でも忘れない。
それからひとつ屋根の下の生活になって、彼女は俺を本当の弟みたいに可愛がってくれた。
彼女は頭がよくて、容姿も美人だともっぱら近所では有名で。同級生たちに『お前の姉ちゃん紹介しろよ』と言われはじめたのは、たしか俺が中学生になった辺りからだと思う。