シェヘラザード、静かにお休み
ある一国の勇者と姫の物語だ。それを持って地下室を出る。
「好きなだけ読んで良いから、マリアの言うことはきちんと聞くこと」
「承知したわ」
「あと、ちゃんと食べること、大人しくしてること」
ぐしゃぐしゃとシーラの髪の毛を撫でたが、彼女はそれを気にせず本を胸に抱いていた。
「ルイスさん、まだ行かなくて良いんですか?」
マリアの声が聞こえて、二人でリビングに戻る。
テレビの点かない部屋は静かだったが、窓の外で鳥たちはいつも通り鳴いていた。
「行ってらっしゃい」
マリアとシーラに見送られ、ルイスは車を走らせた。