シェヘラザード、静かにお休み
シーラの隣に座って、文字から目を離さないその薄い背中を見た。
「ルンペルシュティルツヒェンって知ってる?」
滑舌の良い。ルイスは首を振った。
「面白い話なのに。グリム童話よ」
「どういう話なんだ」
「名前に関する話なのよ。まあそんな話はよくて、面白くなくても話があるんでしょう?」
本を閉じて、頬杖をつく。青い瞳が強く輝いていた。
「王女の話だ」
「反対しないわ。私は貴方に従う」
あれだけ感情を顕わにしておいて、その反応。
シーラの感情は長続きするものではないのか。
ルイスは今日二度、衝突して感じたものだった。