シェヘラザード、静かにお休み
出来るだけ優しい力で、その柔らかい髪の毛を撫でる。本当に猫みたいだ。
ルイスの手に、動きを止めてシーラはそれを甘受した。
「怒りとか悲しみとかは、身体のずっと奥底に沈めるの」
静かな声に、ルイスは髪の毛から手を離した。
「奥底?」
「北の孤児院で、魔女の血を引いている子が感情のコントロールの仕方を教えてくれたの」
「それで、奥底に沈めたその感情はどこに行くんだ?」
「死ぬときに煙になるのよ」
にこりと笑われたのでは、言葉にならない。
返す言葉を探していると、シーラは毛布に顔を埋めた。青い瞳が見えなくなる。