シェヘラザード、静かにお休み

檻を挟んでいたが。
シーラは水を差すことはしなかった。

「俺はそれを知っていたし、知っていて黙っていた。だから、お前はその嘘で誰も傷つけていない」

ルイスはシーラへ手を伸ばした。
シーラはその手を取る。

「はい。それを踏まえた、お前の答えは?」

優しく微笑まれた。

物腰は柔らかいふりをして、実はルイスはあまり笑わない。

「誰が何と言おうと、貴方が好きよ、ルイス」

見返りを求める愛を欲する。
シーラはそれを選択する。

そして、忘れていたことを思い出す。

そもそも、この世に無償のものなんてありはしないのだ。

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