シェヘラザード、静かにお休み
君の言葉を、なぞりゆく
『シーラ、シーラ! いつまで眠ってるの』
腕を揺すられて目を覚ます。窓から日の光が射し込んでいた。
『朝ごはんが冷めてしまうわ』
待って、もう少しだけ眠らせて……。
「魘されていた」
飛び上がるようにして身体を起こしたシーラに言ったのは女の声。マイケルの家にメイドとして潜っていた女だろう。
違う人間かもしれない。今のシーラに、声以外に判別要因がなかった。目元を黒い布で覆われているからだ。
目の前は暗く、今が夜なのか朝なのかもわからない。口を開くべきか、どうかも。
「城へ向かっている途中。水ならあるけれど」