シェヘラザード、静かにお休み
一行は、崩落した橋を前に呆然としていた。
誰かが冷静になって考えれば、少しは想像できたものだろう。しかし、誰も考えつかなかった。
「他に道はあるんですか?」
「あるにはあるんですが、戻ることになります」
時間は深夜を過ぎていた。
運転をしているルイスは勿論、後ろに座っているだけの二人も疲労がたまっている。
「その道の途中にうちの別荘があります。そこに今日は泊まりましょう」
ルイスは提案した。それに反対する者はいなかったが、三人の心の中は穏やかではなかった。
早朝。
マリアがローウェルの別荘へ行くと、見慣れた車が停まっていた。