シェヘラザード、静かにお休み

確かに、カルメラが言っていた通り、シーラはオリバーは正気の沙汰ではなかった。

今になってそれは過去のこととして捉えることは出来るが、それ以上でもそれ以下でもない。

過去は過去だ。過去は誰の足を絡め取ることもしなければ、背中から押し潰そうとすることもない。

それらは全て自分の中の被害妄想。自分自身と闘っているだけ。

過去はただそこにある。こちらを見ているのは仕方ない。人間の目も、前についているのだから。

「お墓には、もう行けた?」

シーラはアメリアに尋ねると、ゆっくりと頷く。気持ちの整理はまだずっとつかないのだろう、うっすらと涙の膜が張られた。

「私、もっと強くなります」

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