シェヘラザード、静かにお休み
それを聞くと、シーラはパンを水に浸して口に運んだ。お世辞にも行儀が良いとは言えないが、ルイスは口を閉ざした。
革命家に行儀を求めたところで、だ。
「ルイス、面白い話をしてよ」
「黙れ」
「その歳まで生きてたんだから、烈しい恋のひとつもしてるでしょう?」
「例えしていてたとしてもお前には話さない」
「私ならちゃんと墓にまで持っていけるのに」
檻の隙間から皿を外へ出す。
シーラはルイスより幼く見えた。というより、幼い。十代と二十代の狭間に見える。
世の中の女性なら、この年代に烈しい恋をしているのではないのだろうか。