シェヘラザード、静かにお休み

シーラが立ち上がって、檻の傍まで来た。ルイスはシーラが立っている姿を初めて見た。

お互い、立ち上がって向き合うのは、この距離まで近づいたのは初めてだった。

ルイスの背はシーラより頭ひとつ分高い。
シーラは見上げる格好でルイスの方を向いている。

「ねえ」

「……どうした」

いつも見るシーラの顔は暗がりの中でぼんやりしていたが、ルイスが思っていたよりずっと綺麗だった。
やつれてはいるが、ビスクドールのような白い肌と大きな青い瞳。

不釣り合いに細くなった手足が現実味を失くしている。

< 54 / 376 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop