シェヘラザード、静かにお休み
ひとつ大きく呼吸をして、檻の隙間から腕を出す。
亜麻色の髪とカッパーの瞳を持ったルイスの方へ手を伸ばした。
「手を握って」
細い指先がそれを求めている。シーラは触れることのできる距離で願った。
「何故」
「寂しいから」
そう言って、笑った。
前言撤回だ、とルイスは思う。
「ここは寂しいから、手を握って」
言い終わる前に、ルイスはその細い指を掴み、手を握る。ひんやりと冷たいそれに、温度を分けてやる。
シーラの笑顔はとても美しかった。
「どうか、元気でいてね」
「ああ」
上手い返事は思いつかなかった。
「さようなら」とすぐにシーラが手を離したからだ。