シェヘラザード、静かにお休み
その後ろにいたのは昨日と同じ二人。ルイスの姿がない。
「あの男なら昨夜、辞めた」
その言葉に、へえ、と一言だけ返す。特に驚きはしなかった。
前から辞めた方が良いとは言ってきた。むしろよくシーラが処刑される前日まで勤めていたな、と思ったくらいだった。
もしかしたら、少しは義理を感じたのかもしれない。
「何か必要なものがないのなら……」
「煙草が吸いたい」
「用意しよう」
牢屋の前から人が消える。シーラはベッドに寝転び、それから罅の間から緑を呼ぶ。
メキメキとコンクリートを退けて蔦が伸びる。
本当に、一人になってしまった。