シェヘラザード、静かにお休み
痛い! と若干涙目になりながらその腕を掴む。
しかし男の力にシーラが敵うわけもなく。
「生意気」
「ほっぺたが伸びて戻らなくなったらどうするの」
やっと離された頬を擦ってシーラがルイスを睨んだ。その表情を見て、ルイスはひっそりと安堵した。
「やっと小娘相応の顔したな」
「え?」
戻るぞ、とルイスは立ち上がり、後部バンパーを下げた。
助手席を開けたのを見て、シーラはその様子を窺う。
「乗らないのか?」
「え、開けてくれてたの?」
またもや驚いたような顔をして、シーラは助手席に乗り込んだ。