シェヘラザード、静かにお休み

痛い! と若干涙目になりながらその腕を掴む。
しかし男の力にシーラが敵うわけもなく。

「生意気」

「ほっぺたが伸びて戻らなくなったらどうするの」

やっと離された頬を擦ってシーラがルイスを睨んだ。その表情を見て、ルイスはひっそりと安堵した。

「やっと小娘相応の顔したな」

「え?」

戻るぞ、とルイスは立ち上がり、後部バンパーを下げた。
助手席を開けたのを見て、シーラはその様子を窺う。

「乗らないのか?」

「え、開けてくれてたの?」

またもや驚いたような顔をして、シーラは助手席に乗り込んだ。

< 82 / 376 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop