シェヘラザード、静かにお休み
まだ崩れていない牢屋の中に入ると、シーラが生きていた。
昨日、本当はシーラの処刑日だった。
だからか、まだ生きていることが、とても奇跡のように思えた。
シーラの方は、単に持って行きやすそうだからルイスを選んだだけなのかもしれないが。
「違うわ。こういうときはね、微笑んで『君の笑顔に惚れたからさ』って言うの」
「その安っぽいヒーローは何の受け売りなんだ」
「きっと信じてくれないと思うけれど」
シーラは微笑んだ。前を向くルイスにはそれが気配で分かった。
「ルイスのことを気に入っているのは本当よ」