シェヘラザード、静かにお休み
威嚇のち、借りてきた猫
ルイスの別宅は森を抜けた向こうに建っていた。
といっても、森を抜けても森の中だった。
「早く行けよ」
「……誰もいない?」
「いるに決まってるだろ」
庭の手入れも行き届いている。こんな森の中にあるのに外壁だって綺麗だ。
シーラは段ボールを両手に持つルイスの後ろへ隠れるようについて歩く。
上着のポケットから鍵を取り出すと、その前にドアノブが回った。
一歩下がったルイスの後ろで、シーラも同じように下がる。
扉が開くと、出てきたのはハウスキーパーのマリア。
「坊ちゃん!」
「その呼び方やめてくれ」