シェヘラザード、静かにお休み
ルイスが屈むと、シーラはそこからまた一歩退いた。
「どうした?」
「汚れるわ」
シーラの足は汚れていた。裸足で森の中を歩いたのだから仕方がない。
ルイスの靴を勧めるにも、足の大きさが違い過ぎた。
今更何に腰が引けているのか、とルイスはその様子を見て呆れる。今朝までは威勢の良い狐だったのに、急に借りてきた猫のようになっている。
マリアがその様子を窺っていた。
「まったく」
スリッパを拾ってマリアに託す。それからシーラに近づき、脇の下に手を入れた。
びくっと構えてそれから逃げるには数秒遅かった。