ドクター時任は恋愛中毒
タクシーで彼のマンションに向かう間じわじわと高まっていた緊張感は、到着するとマックスになった。
彼の部屋は、三十階建て高層マンションの、上から数えた方が早い階の角部屋。
最初はリビングで少し話したりするのかなと思いきや、いきなりベッドルームに通されて、心の準備もままならないままドアを後ろ手に閉めた彼に抱きしめられる。
押し付けられた胸板から、とくとく優しい心音が聞こえた。
「……余裕がなさすぎる、と思われても仕方ないな」
耳元で、類さんが自嘲気味に呟く。でも、そんな姿は逆に可愛く思える。
「前に……初夜はそれなりの場所でゆっくり、とか言ってましたよね」
「言ったな。……しかし……無理だ」
「無理って……?」
「“ゆっくり”などと自分をコントロールしていられるわけがない。すでに、喉から手が出るほどお前が欲しくなっているというのに」
少し身体を離した類さんが、切なく瞳を細めて私を見つめ、熱っぽく囁く。
やばい……こんなに本能的な類さん、初めて見る。無感情なサイボーグと呼ばれる彼の、こんなに切羽詰まった姿……ほかの誰にも、見せたくないよ。
私は彼の頬に手を添え、こんなお願いをした。