ドクター時任は恋愛中毒
何度もため息をつきながら、意味なく部屋をウロウロして過ごすこと十数分。
施錠しないままだったドアから、再び無表情の時任先生が登場した。その手には、スーパーの袋がぶら下がっている。
てっきりコンビニで下着やら洗面用具やらを調達してくるのかと思ってたけど、どうやら食べ物を買い込んできたようだ。
「一体何を買ってきたんですか?」
「夕飯の食材だ。冷蔵庫開けてもいいか?」
「いいですけど……」
すでに反論する気力もなく、流されるままに応える。
リビングからも見えるキッチンで手際よく食材を冷蔵庫にしまっていく彼をぼんやり見ていると、「ふぇぇ」と小さい泣き声が聞こえてハッとした。
「千緒、どうしたの? そろそろミルクかな~?」
ベビーベッドから小さな体を抱き上げ揺すりながら、ダイニングテーブルに置かれている、千緒の育児日誌を開く。
妹と交代で育児をしていると、授乳時間や排便回数が一目でわかるこの記録がけっこう役に立つのだ。
前回のミルクは四時か……。壁の時計を確認すると、もうすぐ七時になろうというところ。
「ちょうどだね。すこし待ってて」