ドクター時任は恋愛中毒
「今、あのおじちゃんがミルク作ってくれてるからね」
「おじちゃん……?」
真剣にミルクの粉をすり切り一杯計っていた時任先生が、眉間にしわを刻んで不本意そうに振り向いた。
ま、まさか拗ねてる? そりゃ、見た目は若いしカッコいいけど、確か三十超えてたよね?
「えーと、お兄さんの方がいいんですか?」
「……いや。よく考えたら、そうだよな……0歳児の目には、まごうかたなき“おじちゃん”だろう……」
どこか哀愁を漂わせながらキッチンに向き直った時任先生に、思わずぷっと吹き出してしまう。
「……何がおかしい」
「いえ、時任先生の人間らしい一面が垣間見えたなぁって」
「俺は最初から人間だ」
「……そうみたいですね」
口数は少ないし相変わらずわかりにくい彼ではあるけれど、いつしか警戒心は解けていた。
無事にミルクを作成し、腕の内側を使って温度を確かめた彼から哺乳瓶を受け取る。
ソファに座り、横抱きにした千緒の口元に持っていくと、歯のない千緒の小さな口がぱかっと開いて、待ってましたとばかりにミルクをちゅうちゅう吸い始めた。