ドクター時任は恋愛中毒
「ふふ、お腹すいてたね」
「……こんなに小さいのに、立派な生命力を感じるな」
ソファの傍で立ったまま腕組みをし、しみじみ呟く時任先生。笑っているわけではないけれど、普段より表情が柔らかい気がする。
なんだか、こうして自分のほかにもう一人いてくれると、精神的にすごく楽だな。
いつも、たった一人で千緒の世話をしていると、トイレに立つのも躊躇するくらい、ずっと気を張っているから……。
「さて、次は大人の食事を作るとするか」
時任先生はそう呟き、ワイシャツの袖を腕まくりしてキッチンに戻っていく。
「時任先生、料理なんかできるんですか?」
「ひとり暮らしが長いから、それなりにな。栄養士のお前には負けるだろうが」
「いや、学校ではもちろんそういう勉強をしましたけど、最近料理なんかしないから大した腕じゃないです」
一人暮らしを始めてからというもの、なんだかんだ外食やコンビニのお弁当に頼ってしまい、料理なんて数えるほどしかしていない。
さらに千緒が来てからは適当なものをサッとかき込む日々になったため、食事内容はより貧相になっている。というか基本、納豆ご飯か卵かけごはんのローテーションだ。