ドクター時任は恋愛中毒
そのことを、キッチンに立ち手際よく料理を始めた時任先生の背中に打ち明けると、淡々とした反応が返ってくる。
「ま、この生活じゃ料理する気力も体力もないかもしれないが、資格が泣いてるな」
「……返す言葉もありません」
「別に責めているわけじゃない。自分より千緒を優先している証拠だろ。むしろ保護者としては胸を張っていいんじゃないか?」
「時任先生……」
やばい……。なんか、鼻の奥がツンとする……。
千緒が来てからというもの、彼女のお世話が最優先で、自分のことは二の次。
赤ちゃんのお世話ってそういうものだと頭で理解していても、疲れはたまってくる。
その疲れを癒すのは千緒の笑顔くらいなもので、自分ではそれで十分だと思っていたはずなのに、時任先生の言葉がやけに胸に沁みる。
この生活のことは家族以外の誰にも話していなかったけれど、心の奥ではずっと、誰かにこんな風に労って欲しかったのかもしれないな……。