ドクター時任は恋愛中毒
◇嫉妬などではない


水越の姪、千緒をひと晩見守った後の勤務は、この上なく眠かった。

職業柄、睡眠不足には慣れているつもりだったが、仕事でそうなるのと育児でそうなるのとではまた違う種類の疲れがある。

まして、乳児の命を預かっているという緊張感もあったため、千緒がすやすや眠っている間でも俺はあまり気が抜けなかった。

ただその甲斐あって、千緒をあまり泣かせることなく俺は無事に役目を終えることができた。

早朝、水越が目を覚ますより先に妹の早帆(さほ)さんが帰宅し、見知らぬ男が我が子にミルクを与える姿にぎょっとしていたものの、俺が事の経緯を説明して詫びると、逆に感謝された。

彼女自身、姉に負担をかけていることを、常に心苦しく思っていたそうだ。


『それにしても、こんな素敵な彼氏がいるだなんて、お姉ちゃんったらひと言も教えてくれないんだから』

『いや、俺たちは別にそういう関係ではない。単なる同僚だ』

『照れなくていいですって。お姉ちゃん真面目だから、単なる同僚を部屋に上げるような人じゃないですもん』

『……いや、だとしても俺は別に』

『だから、余計に申し訳なくって……早くこの生活、なんとかしなきゃなと思ってはいるんですけど』


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