ドクター時任は恋愛中毒
「いただきます」
そう呟いて箸を割り、いざ食べようとしたところで、ふと背後からの視線に気が付く。
振り返れば、同じ脳神経外科の男性医師たちが三人もそこにいた。彼らは興味津々に弁当をのぞき込み、口々に感想を述べ出す。
「時任先生が、愛妻弁当を持ってくる日が来るとは……しかし水越ってのは誰だ?」
別に妻ではない。勝手にメモを見るな。
「いえ、自分は知らないです。うちの病院には“サイボーグなんてオイル飲ませとけ”みたいな女子しかいないと思ってました」
……だから、サイボーグという言葉の選択が間違っているとなぜ皆気づかない。サイボーグは基本人間だ。オイルを飲むのはロボット。
ところでそんなひどいことを言う女子というのは誰なんだ。お前らの方こそ人の気持ちがわからないロボットなんじゃないのかと反論させてもらいたい。
「へええ、今どき冷食が一個も入ってない。俺の推理によると、栄養部の人間とか? あ、そういえば……」
最後に発言したもっとも若い医師が、何かひらめいたように人差し指を立てて続ける。