ドクター時任は恋愛中毒
◆不安な夜
昼食の時間帯は、もっとも忙しくなる栄養部。
そのオフィスは、病院食を調理する広い厨房とつながっていて、すぐに行き来ができる構造になっている。
もうすぐ午後一時になろうとしている現在、先輩方は、食事を終えた患者さんがどれくらい料理を残しているのか、という調査のため厨房に入っていて、オフィスには私一人。
研修も今日で終わりで、月が替わったらいよいよ本採用になるため、上司に提出するレポートをまとめる時間にしていいよと言われ、ひとりデスクに向かっているのだ。
ゆうべたっぷり寝たおかげで頭は冴えていて、レポートはさくさく進んでいたのだけれど……。
コンコン、と扉がノックされ、私はペンの動きを止める。
ドアの方を見つめていると、「失礼します」と言いながらぬっと現れたのは、意外な人物で。
「と、時任先生……!」
昨夜のことがあってから、顔を合わせるのは初めてだ。
彼に深入りしてはいけないと思ったはずなのに、その姿を見ただけで心臓は勝手に飛び上がってじわじわ頬が熱くなる。
いったい、ここに何の用だろう。