ドクター時任は恋愛中毒
深入りしないとか、もうすでに無理な気がする……。だって、見れば見るほどカッコいいし……。
こんなにも至近距離で見るのは初めてなので、ついまじまじとその美麗な横顔を観察してしまう。
羨ましいほど高く尖った鼻、外国人のように目と眉の距離が近く、彫りが深くて……それこそ、イケメンを科学的につくりだしたサイボーグのよう。
そんな私の無遠慮な視線に構わず、彼はデスクの上にあったメモ帳を勝手に一枚破いて、サラサラとペンを走らせた。
「俺の連絡先だ」
「え……っ?」
驚いてメモを覗くと、“時任類”という彼のフルネームと090からはじまる携帯電話の番号が記してあった。
時任先生、下の名前は類っていうんだ……。ささいな情報をひとつ得ただけなのに、胸が躍った。
「出られない場合もあるが、必ず折り返す」
「あり、がとう……ございます」
どうしよう……嬉しい。
私はメモを手に、習字のお手本のような美しい字を意味もなくジッと見つめてしまう。この番号、あとでバッチリ登録しておこう。
「ただし」
浮足立つ私の内心とは裏腹に、時任先生が釘を刺すように付け加える。