ドクター時任は恋愛中毒
「なんて。ごめんね、千緒にはわからないよね」
ふっと笑いながら何気なく小さなほっぺに触れ、あれ?と思う。いつもより温かい……というか、ちょっと熱いような?
急に不安になって、ベビーベッドの近くにある棚から体温計を取り出して千緒の熱を計ってみる。
三十秒ほどでピピっと音を立てた体温計を見てみると、三十九、六度もあった。
「うそ……大丈夫? いつの前にこんなに……」
我が家に来てから、千緒が熱を出すのは初めてだった。しかも三十九度を超える高熱。
ミルクもいつも通り飲んだし機嫌もいいけれど、胸が上下する動きが速く、呼吸も荒いみたいだ。
一気に不安が押し寄せてきて、私は携帯を手に取った。早帆に連絡するためだ。
「出られない……かな」
一旦千緒をベッドに寝かせて彼女の携帯に何度かコールしたけれど、出てくれる気配はなかった。しかも、職場の電話番号は知らない。
「どうしよう……」
弱気になる私に追い打ちをかけるように、ベッドの上で千緒が泣き出した。
微かに漂う匂いでオムツ交換だとわかったけれど、オムツを開けてみて私はさらにパニックになった。