ドクター時任は恋愛中毒
その言葉に、はっとして息を呑んだ。
私……千緒はあくまで妹の子、自分の子じゃないからという、どこか他人事な気持ちが心のどこかにあって、この状況から目を逸らしたかったんだと思う。
誰か、この子を何とかして。時任先生に連絡したのも、そんな甘えがあったからだ。
千緒を守れるのは私だけ――。わかっていたつもりで、全然わかっていなかった。
子どもを預かるということは、命を預かること。今、ようやくそのことに気付けた気がする。
「……ありがとうございます、時任先生。私、目がさめました」
『俺は別に何も……。とにかく、すぐに向かう』
「はい。待ってます」
時任先生との電話を終えると、私はすぐに白湯をつくって、千緒に与えてみた。
しかし哺乳瓶では飲みたがらず、スプーンに変えてみると、ほんの少しだけ口に含んでくれた。
「頑張れ、千緒……」
声を掛けながら何度もそれを繰り返し、合間に小児科のある夜間救急を調べ、出掛ける準備を整える。入院になることも考え、着替えやおむつも多めに用意した。
それから、早帆の携帯にももう一度かけてみたけど、つながらず……。
ぴったりニ十分でマンションに到着した時任先生が千緒の様子を見て「すぐに受診しよう」と判断し、私たちは彼の車で病院へと急いだ。