ドクター時任は恋愛中毒
◇真夜中の車内キス
千緒は小児科のある救急病院でスムーズに処置をしてもらうことができた。
現在、処置室のベッドの上には、小さな腕に点滴をされている千緒。水越はその脇に座り、不安そうに彼女を見守っている。
千緒はやはりロタウイルスによる胃腸炎で、脱水症状は軽いものの、月齢の低さから病院の管理下にあったほうが安心だろうと、入院を勧められた。
今の俺には何もできることがないが、さきほどようやく水越の妹と連絡が取れたため、こちらへ向かっている彼女が来るまでここにいて、水越をまた自宅へと送り届けるつもりだ。
「お姉ちゃん、千緒……!」
やがて、職場からそのまま来たという風なドレスに一枚上着を羽織った姿で、妹が駆け付けた。
普段とは違う千緒の姿に胸を痛めている様子で、今にも泣き出しそうだ。
水越は座っていた椅子を彼女に譲り、自宅での千緒の様子を説明したのち、「先生呼んでくるね」と処置室を出て行った。
その横顔には安堵が広がる半面、疲労も滲んでいる。
入院には母親である妹が付き添うことになり、水越は一旦自宅に戻ってから入院するにあたって足りないものなどを揃え、昼間に面会にくればよいとのことだった。