ドクター時任は恋愛中毒
処置に当たってくれた医師や看護師たちに挨拶をして、俺は水越とともに病院を後にした。
車に乗り込んで、深夜にさしかかった暗い街を走る。ひっそりと寂しい景色ではあるが、道が空いているのはありがたい。
そんなことを思ってハンドルを握る俺の横で、水越が小さくため息をついた。
「仕事……研修を終えてようやく正式に勤め始めたそばから、いきなり休んで……先輩たちに迷惑かけちゃいますね」
迷惑、か……。真面目な彼女らしいが、こればかりは仕方のないことだろう。
「同居している幼い姪が入院したんだ。心配こそすれ、迷惑だなんて周囲も思わないだろう」
「そうでしょうか……」
納得できない様子の水越に、俺は“気にするな”という意味で、こんなことを言う。
「だいたい、お前はまだ大した戦力ではないだろう」
「それは……そうかもしれませんけど」
水越は落ち込んだように、ますますうなだれてしまった。
ぬ……どうやら言葉の選択を間違えたらしい。違うんだ。励ましたいのだ。俺は。