ドクター時任は恋愛中毒
不謹慎? いったい何を言おうとしているんだ。
ただならぬ雰囲気を肌で感じ取り、俺はごくりと唾を飲む。耳の奥で、どくどく鳴る心臓の音がうるさい。
「私……時任先生のことが、好きです」
消え入りそうな声なのに、ハッキリと聞こえた。ついでに、耳の中でエコーまでかっている。
“私、時任先生のことが、好きです”
それは、あの何やら甘ったるいオーラを纏い、アドバイスを求めては勝手に怒って去っていく女性たちが俺に何度も言って聞かせたあのセリフ。
“私、藍澤先生のことが好きなんです”
と、同種のものなのか……? だとしたらつまりそれは“恋愛感情”というやつで、脳内にあらゆる化学物質が溢れた状態で……。
俺は冷静に頭の中を整理しているつもりだったのに、考えれば考えるほど逆に動悸が激しくなった。
なんなんださっきから、体が言うことを聞かん……。とりあえず、彼女のほうを先に落ち着かせよう。
「み、水越。それは思い込みというか錯覚……ではないだろうか」
「違います! 最初から、素敵な先生だとは思ってたんです。……でも中身が変だから、好きにならないようにしようって、自分に言い聞かせてたんですけど」
「中身が、変……?」