ドクター時任は恋愛中毒
どうやら眠ってしまうのはさぼり癖というわけでなく、理由があるようだ。本来は真面目で、しかも負けず嫌いな性格とみた。
いい新人が入ったな……と、俺の頬が久々に、ごくごく微かに緩んだ。水越を応援するつもりで、俺は俯く彼女に告げる。
「……睡眠は量より質だ。あとで、うちの医局に来い」
「え?」
「そうすれば、明日お前は居眠りしないで済む」
“ちょっと何言ってるかわかりません”と水越の顔に書いてあったが、俺は無視してその場を後にした。
その日の夕方、ちょうど日勤の交代時間の頃に、水越が居心地悪そうな顔をして医局にやってきた。同じ室内にいた数人の同僚たちが、不思議そうに彼女を眺めている。
「……あの、時任先生は」
「ここだ」
自分のデスクの方に水越を手招きし、隣の席に座らせた。オドオドしている彼女に構わず、俺は最低限のことを質問する。
「寝る前に、アルコールやカフェインを取る。テレビ、パソコン、スマートフォンをだらだら眺める。熱い風呂に浸かる……なんて馬鹿なことはしていないな?」
「し、してないです」