ドクター時任は恋愛中毒


「ど、どうって、別に」

「“別に”って顔じゃないよ、お姉ちゃん。超赤くなってる」

「からかわないでよもう」

「でもいいよね。相手が医者なら、私みたいな苦労もないし」

「早帆……」


一度も実際に会ったことはないのだけれど、早帆と千緒を捨てて出て行った男は、不安定な職に就いていたらしい。そのせいか私や両親に紹介してくれることもなく、交際中から心配で仕方なかった。

でも、妹は彼のことが好きだし、そのうちお腹に千緒ができてしまって、反対する暇もないまま彼らは籍を入れた。

式すら挙げていないけれど、本人たちが幸せなら周りがとやかくいうものでもないか……。そう思っていた矢先に、彼は逃げ出したのだ。


「連絡、全然ないの?」

「……うん。でも、今週中にはハッキリすると思う」

「今週? なんでわかるの?」


連絡も取っていないのになぜ断言できるのか、不思議で聞き返す。


「その時が来たら、お姉ちゃんにもちゃんと話すよ。同居のことも、改めて考える」

「別に、私はいつまでいてもらっても全然平気だよ?」

「そういうわけにはいかないよ。ほら、お姉ちゃんが彼氏とラブラブできないし」


悪戯っぽく笑った彼女だけど、おそらく遠慮しているのだろう。家族なんだからもっと甘えていいのに。そう思ったけど、強くは言わなかった。


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