ドクター時任は恋愛中毒


千緒のことを早帆に任せ、残りの休日をどう過ごそうかなと思いながら、病院の玄関を出た。ちょうどそのとき、バッグの中でスマホが震えていることに気が付く。

歩道を歩き出しながらスマホを取り出した私は、画面に表示された名前を見て心臓が止まるかと思った。

電話だ……時任先生から。

いったいどうしたんだろう。どうしても先日のキスのことが頭をよぎるけど、彼からそういう用事で電話があることはあり得ないはず。

だって、“くだらない用で掛けてくるな”と釘を刺さしてきたのは時任先生だもの。

ということは、仕事のこと? いや、いくら同じ病院に勤めていても、職種が違い過ぎるから特に業務連絡しあう関係でもないよね……。

けっこう長い間迷っていたと思うのだけれど、バイブは変わらず鳴り続けていた。

なかなか諦めないってことは、やっぱり重要な用事が……?

怪訝に思いながらも、私は画面の通話マークをタップした。


< 51 / 110 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop