ドクター時任は恋愛中毒


「も、もしもし……?」

『お、やっと出てくれた。えーと、水越、真帆ちゃん?』


……あれ。時任先生の声じゃない。誰よこの馴れ馴れしい男は。


「……どなたですか?」

『あ、ごめんごめん。自己紹介忘れてた。俺、サイボーグ時任の大親友の藍澤天河です』

「藍澤……?」


どっかで聞いたことがあるような……。ついでに、そのフルネームの字面を何かで見たこともあるような……。

脳裏にぼんやり浮かぶのは、一枚の紙きれ……婚姻届だ。そして、それを泣きながらびりびりに破いた大切な親友、美琴の顔も。

そっか、コイツ……! 美琴を泣かせた例の悪魔だわ!

その後美琴から連絡があり、結局ふたりはうまくいったらしいけれど、一度は彼が美琴を泣かせたことに変わりない。

そのことがあって私は彼をあまり好意的に思えず、つい口調が冷たくなる。


「……何の用ですか。しかもこれ、時任先生の携帯ですよね」

『うん。ちょっと借りてるんだ。まあ気にしないでよ。で、本題なんだけど、真帆ちゃん、来週の日曜日のご予定は?』


……は? なんで、悪魔が私の予定を聞いてくるの?

しかも許可も得ず“真帆ちゃん”って呼び方……すごい腹立つ。親友の婚約者とはいえ不愉快。


< 52 / 110 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop