ドクター時任は恋愛中毒
「も、もしもし……?」
『お、やっと出てくれた。えーと、水越、真帆ちゃん?』
……あれ。時任先生の声じゃない。誰よこの馴れ馴れしい男は。
「……どなたですか?」
『あ、ごめんごめん。自己紹介忘れてた。俺、サイボーグ時任の大親友の藍澤天河です』
「藍澤……?」
どっかで聞いたことがあるような……。ついでに、そのフルネームの字面を何かで見たこともあるような……。
脳裏にぼんやり浮かぶのは、一枚の紙きれ……婚姻届だ。そして、それを泣きながらびりびりに破いた大切な親友、美琴の顔も。
そっか、コイツ……! 美琴を泣かせた例の悪魔だわ!
その後美琴から連絡があり、結局ふたりはうまくいったらしいけれど、一度は彼が美琴を泣かせたことに変わりない。
そのことがあって私は彼をあまり好意的に思えず、つい口調が冷たくなる。
「……何の用ですか。しかもこれ、時任先生の携帯ですよね」
『うん。ちょっと借りてるんだ。まあ気にしないでよ。で、本題なんだけど、真帆ちゃん、来週の日曜日のご予定は?』
……は? なんで、悪魔が私の予定を聞いてくるの?
しかも許可も得ず“真帆ちゃん”って呼び方……すごい腹立つ。親友の婚約者とはいえ不愉快。