ドクター時任は恋愛中毒
「あく……藍澤先生には関係ないかと」
つい“悪魔”と口走りそうになって、慌てて言い直した。
『それがあるんだなー。いや、俺の可愛いフィアンセがね? キミたちとWデートがしたいって言っててさ』
Wデート……? 美琴たちカップルはともかく、もう一方は?
「誰ですか“キミたち”って」
『そりゃもちろん、真帆ちゃんとこの電話の持ち主だよ』
「え……」
どきりと、心臓が波打つ。いやでも、あの時任先生が乗り気だとは思えない。おおかた、美琴と藍澤先生で勝手に盛り上がっているだけだろう。
そう自分に言い聞かせつつも、ほんのり期待する気持ちも隠せず、こんな質問を投げかける。
「と、時任先生は、なんて言ってるんですか……?」
『んー? 今ね、ヤツの部屋にお邪魔してるんだけど、キミに断られたらどうしようって怯えて、部屋の隅っこで耳ふさいでガタガタ震えてる』
……時任先生が? まさか。
鼻で笑って「冗談言わないでくださいよ」と軽く流す私に、藍澤先生はこう続けた。
『冗談じゃないんだけどな。ちょっと待って、本人に代わるから』