ドクター時任は恋愛中毒
私は彼に聞こえないようにくすっと笑ってから、素直な気持ちを伝えた。
「私は、時任先生さえよければ、うれしいです。あとで、妹にも確認してみますけど」
電話の向こうで、時任先生がホッとしたように息をつく。
『そうか。でも、千緒のことがあるからな。む、無理はしなくていいぞ?』
「ありがとうございます。そしたら、またあとでこちらからお電話してもいいですか?」
『……無論だ。待っている』
「じゃあ、また」
『うむ。……失礼する』
そうして通話を終えた後も、なんだかくすぐったい気持ちで口元が緩んできてしまう。
ねえ時任先生。電話でデートに誘うのは、ご法度なんじゃなかったんですか?
電話では聞けなかったけれど、今度会った時に、わざとそう聞いてみようかな。
動揺するか、照れまくるか……どちらにしろ、そのレアな姿に、私は余計彼を愛しく思うことだろう。
「遊園地、か」
美琴がどれほど悪魔に溺愛されているのかを見られるのも楽しみだし、この一週間、その予定を励みにして頑張ろう。
私はそう心に決め、軽い足取りで再び歩き出した。