ドクター時任は恋愛中毒
◇千緒の父親
金曜の夕方。やるべき仕事をすべて終えた俺は、デスクでとある雑誌を開いていた。しばらくすると、背後から声が掛けられる。
「時任先生、難しい顔して何読んでるんですか? 新しい研究発表でも……?って、全然違うし!」
「なになに、また時任先生が面白いことになってる?」
「えーとなになに、“恋人と乗るならコレ♪絶叫アトラクションのドキドキを恋のそれと勘違いさせてしまおう!”……ってちょっと、色々ツッコみたくなる雑誌だなおい」
……デジャブか、これは。
弁当の時とまったく同じような状況で、あの時とまったく同じ三人が呼んでもいないのに集合し、俺の背後にて好き勝手に喋りだす。
しかし前回と似たような状況とはいえ、俺の心境だけがあの時とは少し違った。
「……おい」
椅子を回転させて、同僚たちの方を振り返る。若干怯えたようにびくりと反応した三人に、俺はひとつ質問を投げかける。
「既婚者、または恋人のいる者は?」
「「「はい」」」
すると、三人そろって挙手をした。……何だコイツら、全員妻か彼女がいるのか。……意外だ。
まぁアドバイスを求める身としては、助かるのだが。