ドクター時任は恋愛中毒


「その先、とは?」

「そりゃもちろんキスですよ! 遊園地は意外と隠れられる場所ありますから、ここは一発二人のファーストキスを……!」

「いや……キスは、すでに済ませている。己の欲に負けてしまって……」


事実を告げただけなのに、三人の同僚はさらに色めき立って騒ぎ出す。


「やべえ、男なのにきゅんときた。キス済ませてるのに、さりげなく手をつなぐ方法に悩んでるって、なんですかその変な奥手っぷり」

「俺ちょっと水越さんになってみたい」

「わかる。理性の塊みたいな時任先生が、己の欲に負けて男になる瞬間って想像しただけでやべえ」


……俺は、アドバイスを求める相手を間違ってはいないだろうか。いやしかし、藍澤よりはマシだろう。

ヤツときたら、この胸に渦巻く初めての感情に本気で戸惑う俺に対し、あまりに次元の違う話を……。


『観覧車乗れば、彼女にいろんなイタズラできるよ? まぁ最後までは無理だけど』


そう言って男のくせに妖艶な微笑をした彼を、この悪魔め……と、俺はその時初めて罵りたくなった。

お前と違って、こちらは若干故障気味のサイボーグなのだ。水越に、そのような……イタズラ、などと……。

しかも“最後”とはなんだ。なんの“最後”なのだ。


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